再び巡る時の中で

                        「残酷な天使」

                                         Written by史燕





「フォースチルドレン? この時期に?」
「私もよくわからないわ、エヴァもないのに」
「なんでも委員会直々の選定だそうだぞ」
「マルドゥックを通さずに?」
「ま、マルドゥックの選定基準自体もよくわからないがな。りっちゃん」

言外に、加持はマルドゥック=NERV本部だということを匂わせるが、リツコは気にした風でもない。

「とにかく、やって来る者は追い返すわけにもいかない、か」
「ええ、ひとまずシンクロできるかだけでも確認しないといけないわ」
「もちろん初号機以外で、だろ?」
「ええ」
「さすがに、シンちゃん以外を乗せる訳にはいかないか」
「ミサト、10年前の事故を繰り返したくないでしょ」
「そうなのよねえ」
「逆に、シンジ君がそうなってないのが不思議なもんだが」
「それは私も知りたいのが本音よ」
「MAGIは?」
「回答不能。理論上ありえないのだもの」
「まっ、シンジ君はシンジ君だ。これまでの実績がその結果なら問題ないさ」
「使えるものは使う。加持君らしいわね」
「使い方はさっぱりだがな」
「そこはミサトの領分だもの」
「葛城三佐、よろしくお願いします」
「わかったわよ。あったく、二人してからかうのはやめてよ」
「ごめんごめん」

「ひとまずは、そういうことで」
「ええ、わかったわ」
「加持君も、気を付けて」
「ああ、注意してみるさ」

同期三人は、新しくやってくるチルドレンについて、どう対応するか状況の推移を見守ることにした。



第三新東京市に、一人の少年が足を踏み入れた、
銀髪に赤い目、アルビノを示す身体的特徴は、端正な顔立ちと相まって、人に忌避感を抱かせるどころか、むしろその魅力を一層引き立たせていた。

少年は、NERV本部に向かうと、一人の少女と出会う。

「君は、惣流・アスカ・ラングレーだね」
「そうよ。アンタ、初めて見る顔ね」

アスカ自身はその容姿からそれなり以上にこのあたりでは有名だ。
本人が面識のない人間が自分のことを知っていることもおかしくはない。
しかし、NERV本部で、しかも同世代の知らない人間となると話は違ってくる。

「聞いてないのかい。四番目の仕組まれた子供だよ」
「へぇ、あんたがフォースなの」
「ああ、君の心はガラスのように繊細だね。安易に触れるものを傷つけかねないほどに。好意に値するよ」
「何よ、いきなり」
「好きってことさ」

眉一つ動かさずにとんでもないことを言ってのける少年にアスカは咄嗟に距離を置いた。

「な、な、なんなのよ、アンタ!!」
「渚カヲル、フォースチルドレンさ」
「ああ、もうっ。話し合通じないわね」

「ところで、惣流さん」
「なによ?」
「発令所に案内してくれないかい?」
「なんでよ」
「いやあ、初日から迷子になるのはちょっと気兼ねして」
「案内するアタシにも気兼ねしなさいよっ」
「悪いとは思うけど、いいかなって」
「あ〜〜もう。知らないわ」

アスカはカヲルの言葉に翻弄されることに苛立ちながら、それでも本部を案内した。

「なんだかんだで面倒見がいいね」
「アンタがやれって言ったんでしょ!」
「ありがとう、感謝に値するよ」
「ああ、もうっ。一生言ってなさい」

こうしてアスカの精神的なダメージを蓄積させつつ、二人は発令所に到着したのだった。



その日は渚カヲルのエヴァとのシンクロを試してみることになった。
実験は制式採用機である弐号機を用いて行われた。

「まさか、コアの書き換えなしにシンクロするなんて……」
「システム上ありえません」
「でも、事実は事実よ」

カヲルが叩き出した結果に、発令所は困惑していた。
理論では説明できない結果が、咀嚼できないのだ。 もちろんそれは、彼が第17使徒タブリスであることが原因なのだが、それを知る由もないNERVのスタッフは、受け入れがたい現実をどう処理するか頭を悩ませていた。

「ひとまず、アスカやレイの予備パイロットとして登録、新しくエヴァができ次第そちらに乗ってもらうことにします」
「それが妥当なところだろうな」
「問題ない、そのまま進めたまえ」
「はっ、了解しました」

ミサトはゲンドウと冬月に現状をありのままに伝え、そのうえで様子見を兼ねて予備登録する旨を上申した。
上意組織とはいえゼーレの息がかかった部外者を入れ、何の過失もないチルドレンを降板する理由もないことから、これはそのまま許可された。

「四番目の少年か。ゼーレは、まさかな」
「そのまさかを想定に入れなければ、ゼーレの意図など読めませんよ」





次へ

前へ

書斎に戻る

トップページに戻る