再び巡る時の中で
「友人」
Written by史燕
シンジは無事退院を果たし、翌日から学校へと通い始めた。
ケンスケが情報を仕入れたのだろう、復帰したその日の昼休みにトウジとケンスケが二人揃ってシンジを呼び出したのだった。
レイは心配そうに見ていたが、大丈夫だと伝えて教室を後にした。
「すまんかった」
「俺たちが悪かった」
屋上につき次第、二人は開口一番にそう言った。
「えっと、何のことかな」
おそらくこの間の使徒戦のことだろうと当たりは着いたが、立場上明言するわけにはいかない。
そう思っていると、ケンスケはそれを察したのか説明を始めた。
「碇、秘密にしなきゃいけないのはわかってるんだ」
「この間の戦いで、ワシらを守るために苦戦したって、聞いたんや」
「美人の作戦部長さんに説教されたときにね」
「あれのパイロットが碇やっちゅーのは、そのときに綾波が教えてくれたんや」
「『どうして碇君に迷惑をかけたの』ってすごい剣幕でね」
「綾波が……」
予想外の名前だった。
ミサト辺りがうっかり口を滑らせた可能性は思い当たったが、まさかレイが二人に話すとは思わなかったのだ。
「二人とも、このことは」
「わかってる。秘密なんだろ?」
「大丈夫、男と男の約束や。絶対に話さんわ」
「ありがとう」
シンジがそう言うと、二人は居ずまいを正して口を開いた。
「碇、礼を言うのはワイらの方や」
「俺たちなんか自業自得で死んでも仕方がないのに、碇は俺たちを守ってくれた」
「「ありがとう」」
二人はそう言って頭を下げた。
「ちょ、ちょっと二人とも、頭を上げてよ」
「いや、俺たちはこうしないと気が済まないんだ」
二人の様子に少し頭を抱えた後、シンジは次のように言った。
「それじゃあ、一つお願いがあるんだ」
「お願い?」
「なんや、ワシらに出来ることなら何でも言ってくれ」
「別に、そう大変なことじゃないんだ。ただ――」
――僕と友達になってほしい――
そう言われた二人は、力強く頷いたのだった。
友人となると、お互い遠慮が無くなるのがこの三人だ。
無粋な笑みを浮かべて、二人はシンジを問い質し始めた。
「なあシンジ、綾波とはどこまでいったんや」
「ど、どこまでってどういうことだよ」
「二人が同じパイロット仲間なのは知ってる。ただ、それだけにしちゃ少し仲が良すぎないか」
「せやせや、昼飯も用意してやっとるようやし、噂になっとるんやで」
そう言われても、シンジにはやましいところは何もない。
しいて言えば、前回より共に過ごす時間が多いくらいだ。
「何でもないよ」
「ほんまかいな」
「何もないから」
「ほんとのほんとに?」
「ほんとに何でもないってば」
「トウジ、どうやらこの様子を見ると、ほんとに何もないみたいだぜ」
追求の手が止まり、シンジはホッと息をついた。
――キーンコーンカーンコーン――
「あっ、そろそろ次の授業が始まるよ」
「やべっ、急がないと」
こうしてシンジは二人の親友と共に、教室へと向かうのだった。
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